■こんにちは、田中信弥です。
いつもお読みくださり、本当にありがとうございます。
■大きな国際大会では、有名選手が大挙して出場しているため、
セキリュティは当然のことながら厳しい。
伊達公子選手に帯同したアメリカの大会には・・・
男子は、サンプラス選手を筆頭に、アガシ選手、ベッカー選手等。
女子は、グラフ選手、サンチェス選手、サバティー二選手等。
世界最高峰のテニス選手であり、世界的なセレブ人である彼らが参加していた
ため、最高レベルのセキリュティが発動されていた。
■大会会場は非常に広い。
そのため、至る所にガードマンが立っており、彼等は我々のつけている
IDカードを見て、場所への立ち入りを許可したり、却下したりしている。
■識別は、至って簡単。
IDカードに、たくさんの色付きシールが貼られており、その場所に入るために
必要な色のシールが貼られていれば・・・
「どうぞ、お入りください!」
貼られていなければ・・・
「お引き取りください!」
となる。
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■「私が男子ロッカールームに向かうと・・・」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■突然だが、
「私は男だ!」by田中
「田中さん、何を当たり前のことを言っているのか?
もちろん、あなたは男だ!」byあなた
とは言わないでいただきたい。
伊達公子選手との練習後、汗をかいたシャツを着替えに
男子ロッカールームに入ろうとした私は、
「何と・・・入れてもらえなかったのだから!」
■190cm以上はあろうかという、黒人系の大きなガードマン。
彼は私のIDカードを見るなり、首を横に振り、
「お前はここに入れない!」
とばかりに、一瞥を食らわした。
その横を、当時、アンドレ・アガシ選手のコーチを務めていた
ブラッド・ギルバートコーチが、大会関係者と談笑しながら通り抜けて行く。
もちろん、男子ロッカールームに入るためだ。
■「何だ? どいうことだ? 俺は女子ロッカーで着替えろと言うことか?
いや、それはありえない。ならっ? 外か? 外?? ウソだろう・・・」
■本当だった。
当時、女子世界ランキング4位の選手に帯同したその日本人コーチは、
観客がスタジアムに足を運び始めた午前11時過ぎ、スタジアムの屋台骨と
なっている鉄柱の陰に身を寄せ、“ひっそり”と濡れたTシャツを着替えた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■「冗談じゃない!」
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■「伊達選手は、普通にいけば最終日近くまでは勝ち残る。
すると私は、一週間、外で着替えるはめになるのか???
信じられない!」
■考えれば考えるほど、いてもたってもいられなくなり、
急遽、伊達公子選手に相談。
話を理解した彼女は、通訳と私と一緒に大会本部に出向いてくれた。
「彼は私のコーチです。
なのに、男子ロッカールームに入れないんです。
IDを変更してください。」by伊達公子
■染めた金髪と、もとのブラウンの髪が入り混じった、
50代らしき品の良さそうな役員の女性は、
「あぁ、そうだったの。ごめんなさい。」
と、すまなそうに返答している。
■「“ホッ”良かった!
これで、男子ロッカールームで着替えられる。」
やり取りの様相から、私は安堵を覚えた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■「誰かが間違えたのね!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■「でも、誰が間違えたのかしら?
わからないから、調べようがないわ。
申し訳ないけれど、我慢してね。」
■耳を疑った。
「えぇ???
そうゆう展開あり?
考えもしなかった。
おいおい、一体、アメリカはどうなってるんだ?」
■再度、伊達公子選手が、
「ブラッド・ギルバートコーチは、全ての場所に入れるIDカードを
所有しています。
ミスター田中も、私のコーチなのですから、ギルバートコーチと同じIDを
ください!」
■「う〜ん。
一度、発行したものは変更できないのよ。
本当にごめんなさないね。」
■「そんなことありえない。
難しい作業ではない。
他の人のIDカードが間違っていたら、変更するんじゃないの?」
疑いの気持ちが強くなり、優しい笑顔の女性が映画の中の悪女に見え始めた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■「終わらされた!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■その後は、「暖簾に腕押しとはこのことか?」というような展開。
押しても、引いても、IDカードはどうしても変更してくれない。
■やり取りの最中、色々な思いが“グルグル”と頭の中を駆け巡ったが、
だんだんとわかってきたことがあった。
漫画、名探偵コナンの決め言葉、
「真実はいつも一つ!」
ではないが、
「私は、この一週間、男子ロッカールームで着替えることはできない!」
■交渉をあきらめて、トーナメント本部を出た瞬間、伊達公子選手が言った。
「いっつも、こうなんですよ。
あからさまに依怙贔屓して!
以前も、車の会社がスポンサーになっている大会で、選手に貸してくれる
のはうれしいんですけれど、他のトップ選手と私とでは車のグレードが
全く違うんですよ!
信じられます?」
■これが、真の実力社会の現実か?
そして、人種差別が根強く残っているのだろうか?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■「そういえば・・・」
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■知り合いの方の息子さんもアメリカで活躍されているが、
当初はそうとうに苦労したらしい。
「他の人の3倍働いて、やっと一人前として認められた。
アメリカで生きるのは厳しい!」
■伊達公子選手は、第五のグランドスラムと言われるその大会で、
みごとに決勝進出。
グラフ選手に敗れはしたが、素晴らしい頑張りを見せ、
アメリカのテニスファンを虜にした。
■当たり前だが・・・
私も一週間。
練習の汗で“ビショビショ”になったTシャツを着替えるため、
スタジアムの柱の陰に向かった。
■会場を出たり入ったりする観客が、
「何でこんなところで着替えているの?」
と、ときおり不思議そうにこちらを見る。
だが、私は気づかない“フリ”をし、黙々と着替えた。
■スタジアムの大きさと、世界の大きさ(広さ)を一緒に感じた。
当時、30歳。
少し、大人になれた瞬間だったのかもしれない。
■いつも最後までお読みくださり、心から感謝しております。
田中信弥
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■追伸:「あなたのテニス上達&健康&人生の幸せを心から願っています。」
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いつもお読みくださり、本当にありがとうございます。
■大きな国際大会では、有名選手が大挙して出場しているため、
セキリュティは当然のことながら厳しい。
伊達公子選手に帯同したアメリカの大会には・・・
男子は、サンプラス選手を筆頭に、アガシ選手、ベッカー選手等。
女子は、グラフ選手、サンチェス選手、サバティー二選手等。
世界最高峰のテニス選手であり、世界的なセレブ人である彼らが参加していた
ため、最高レベルのセキリュティが発動されていた。
■大会会場は非常に広い。
そのため、至る所にガードマンが立っており、彼等は我々のつけている
IDカードを見て、場所への立ち入りを許可したり、却下したりしている。
■識別は、至って簡単。
IDカードに、たくさんの色付きシールが貼られており、その場所に入るために
必要な色のシールが貼られていれば・・・
「どうぞ、お入りください!」
貼られていなければ・・・
「お引き取りください!」
となる。
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■「私が男子ロッカールームに向かうと・・・」
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■突然だが、
「私は男だ!」by田中
「田中さん、何を当たり前のことを言っているのか?
もちろん、あなたは男だ!」byあなた
とは言わないでいただきたい。
伊達公子選手との練習後、汗をかいたシャツを着替えに
男子ロッカールームに入ろうとした私は、
「何と・・・入れてもらえなかったのだから!」
■190cm以上はあろうかという、黒人系の大きなガードマン。
彼は私のIDカードを見るなり、首を横に振り、
「お前はここに入れない!」
とばかりに、一瞥を食らわした。
その横を、当時、アンドレ・アガシ選手のコーチを務めていた
ブラッド・ギルバートコーチが、大会関係者と談笑しながら通り抜けて行く。
もちろん、男子ロッカールームに入るためだ。
■「何だ? どいうことだ? 俺は女子ロッカーで着替えろと言うことか?
いや、それはありえない。ならっ? 外か? 外?? ウソだろう・・・」
■本当だった。
当時、女子世界ランキング4位の選手に帯同したその日本人コーチは、
観客がスタジアムに足を運び始めた午前11時過ぎ、スタジアムの屋台骨と
なっている鉄柱の陰に身を寄せ、“ひっそり”と濡れたTシャツを着替えた。
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■「冗談じゃない!」
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■「伊達選手は、普通にいけば最終日近くまでは勝ち残る。
すると私は、一週間、外で着替えるはめになるのか???
信じられない!」
■考えれば考えるほど、いてもたってもいられなくなり、
急遽、伊達公子選手に相談。
話を理解した彼女は、通訳と私と一緒に大会本部に出向いてくれた。
「彼は私のコーチです。
なのに、男子ロッカールームに入れないんです。
IDを変更してください。」by伊達公子
■染めた金髪と、もとのブラウンの髪が入り混じった、
50代らしき品の良さそうな役員の女性は、
「あぁ、そうだったの。ごめんなさい。」
と、すまなそうに返答している。
■「“ホッ”良かった!
これで、男子ロッカールームで着替えられる。」
やり取りの様相から、私は安堵を覚えた。
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■「誰かが間違えたのね!」
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■「でも、誰が間違えたのかしら?
わからないから、調べようがないわ。
申し訳ないけれど、我慢してね。」
■耳を疑った。
「えぇ???
そうゆう展開あり?
考えもしなかった。
おいおい、一体、アメリカはどうなってるんだ?」
■再度、伊達公子選手が、
「ブラッド・ギルバートコーチは、全ての場所に入れるIDカードを
所有しています。
ミスター田中も、私のコーチなのですから、ギルバートコーチと同じIDを
ください!」
■「う〜ん。
一度、発行したものは変更できないのよ。
本当にごめんなさないね。」
■「そんなことありえない。
難しい作業ではない。
他の人のIDカードが間違っていたら、変更するんじゃないの?」
疑いの気持ちが強くなり、優しい笑顔の女性が映画の中の悪女に見え始めた。
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■「終わらされた!」
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■その後は、「暖簾に腕押しとはこのことか?」というような展開。
押しても、引いても、IDカードはどうしても変更してくれない。
■やり取りの最中、色々な思いが“グルグル”と頭の中を駆け巡ったが、
だんだんとわかってきたことがあった。
漫画、名探偵コナンの決め言葉、
「真実はいつも一つ!」
ではないが、
「私は、この一週間、男子ロッカールームで着替えることはできない!」
■交渉をあきらめて、トーナメント本部を出た瞬間、伊達公子選手が言った。
「いっつも、こうなんですよ。
あからさまに依怙贔屓して!
以前も、車の会社がスポンサーになっている大会で、選手に貸してくれる
のはうれしいんですけれど、他のトップ選手と私とでは車のグレードが
全く違うんですよ!
信じられます?」
■これが、真の実力社会の現実か?
そして、人種差別が根強く残っているのだろうか?
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■「そういえば・・・」
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■知り合いの方の息子さんもアメリカで活躍されているが、
当初はそうとうに苦労したらしい。
「他の人の3倍働いて、やっと一人前として認められた。
アメリカで生きるのは厳しい!」
■伊達公子選手は、第五のグランドスラムと言われるその大会で、
みごとに決勝進出。
グラフ選手に敗れはしたが、素晴らしい頑張りを見せ、
アメリカのテニスファンを虜にした。
■当たり前だが・・・
私も一週間。
練習の汗で“ビショビショ”になったTシャツを着替えるため、
スタジアムの柱の陰に向かった。
■会場を出たり入ったりする観客が、
「何でこんなところで着替えているの?」
と、ときおり不思議そうにこちらを見る。
だが、私は気づかない“フリ”をし、黙々と着替えた。
■スタジアムの大きさと、世界の大きさ(広さ)を一緒に感じた。
当時、30歳。
少し、大人になれた瞬間だったのかもしれない。
■いつも最後までお読みくださり、心から感謝しております。
田中信弥
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■追伸:「あなたのテニス上達&健康&人生の幸せを心から願っています。」
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